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*Translated from original interview in BUFFALO ZINE issue #2. This is part 2 and continues from part 1.

※これはBUFFALO ZINE issue #2のインタビュー英語原文を日本語に翻訳したものです。これは後編で、前編から続いています。

Interview by  Adrian Gonzalez + David Uzquiza  (Buffalo zine) 

※このインタビューは2013年に行われた時のものです。

 

 

『Marfa Girl』は、私たちが住んでいるこの世界について何を教えてくれたのでしょうか?

 

マーファは人口1800人しかいない小さな町だ。そこはまるで、アメリカで何が起こっているかってことの縮図のような場所だとも言える。人種差別が激しく、ラテン系アメリカ人は「お前らのやることはすべて間違っている」と罵倒される。でも実際のところ、あいつらは貧乏なりにもただちょっとでもマシな人生を送ろうと日々を過ごしているだけなんだ。だってよ、あいつらはアメリカのストリートは黄金が敷きつめられているに違いないって本気で思ってるんだぜ。移民のやつを捕まえて、経済が上手くいかないのはこいつらのせいだ、犯罪が多いのもドラッグを持ってくるのも全部こいつら、なんて言っているのはマジで糞だ。多くの人たちは問題があるとすぐ貧しい人たちのせいにするが、実際の問題は金持ちがもっともっとと欲を出してそこら辺にあるものをガツガツ食っちまうことだ。あいつらは自分たちが得をすることしか考えていない。この国において、小規模の社会主義運動はそんなに悪くないんじゃないかと俺は思っているくらいだ。

 

もしロムニーがモルモン教徒じゃなかったら、オバマは今ごろ大統領になっていなかっただろうな。俺は、単に大勢いる右翼のクリスチャンたちがモルモン教徒に投票したくなかった、という理由だけで選挙結果がこうなったと思っている。任期があるからオバマにはもう次の選挙はないが、ひたすら彼が国を良くする何かを起こしてくれることを祈るしかないね。来年の1月で俺は70歳になるんだが、今までは振り子の振り幅がここからここまで行くんだろうというのはだいたい想像がついたが、今はその振り子がいったいどこまで行っちまうのかわからない。今まではこんなことなかったんだけどな。思うんだが、この国はオバマがいてさえ、どんどん右翼になっちまうんじゃないかな。つまり、今は政治的にも経済的にも危険な時代ってことなんだ。

ともかく、俺がマーファに興味を持った理由はそういったわけだ。そしてもちろん、他にも色んな理由があるんだが…この町では、色んなことが起こっているように見えるんだ。この町は50年代から時が止まっちまったような場所なんだ。ここにはカウボーイや牧場主、白人、メキシコ系アメリカ人といったようなずっと昔からここにいるやつらがいる。それに加えて、国境警備隊のやつらはマーファに本部を置いた。この土地の人らとファックする以外たいしてやる事もないのに。おまけに社会的価値も50年代で止まってやがる。ついでにマーファでは、よそで起こったような事件がこの町で起こったとしてもその事実を必死で隠そうとするんだ。起こった事実を否定して、すべて隠蔽しちまうんだ。

 

俺がマーファで映画を作っている時、多くのやつらが「こいつはなんでわざわざこの町までやってきて、悪ガキたちの映画なんか作っているんだ?」って憤慨してたぜ。でも俺にとって彼らは悪ガキなんかじゃなかった。もちろん、ストレートでオールAを取れるような生徒でもなかったけどな。とにかく町のやつらは、俺が優秀な生徒を見つけて、厳格なキリスト教徒のやつらを映画に収めるべきだって思っていたみたいだ。これじゃあ、映画を作る意味がないだろ!と思っちまうよな。だって映画を作るには、まずは世界で一番おもしろいやつらを見つけるだろ?

実際に新聞で見たんだが、マーファで教師をやっているやつが教え子である15歳の男の子を教室でレイプした罪で逮捕されたんだぜ… ジーザス!本当に狂ってやがるぜ。可哀想な子供たちは学校に行くたびに、永遠に考えることになっちまうんだろうな。教師が生徒をレイプするんじゃないか、そんな胸くそ悪いことが学校で起こってしまうんじゃないかってな。まぁつまりここでは色んなことが起こってるんだよ。それなのにやつらは「いや、そんなことはあり得ない!だって私たちは完璧な白人民族なのだから」って言って必死でそういうことを隠そうとする。

この町ではいまだに子供たちの門限は23時前だし、自転車に乗ることしか許さずに檻の中に入れてやがるんだ。アメリカの他の州だと、なにがあっても子供を殴るなんて許されないし、そんなことをしたら犯罪になるだろう。でもここテキサスなら悪い事をした罰として子供を殴ったって平気だし、未だにそれを学校でやっているんだぜ。とんだアグレッシブなところだよ、まったく。とにかく最近は子供たちもインターネットを使って、この小さな自分たちの世界の外ではなにが起こっているか分かるようになってきたし、未来も仕事も期待もできないこの町での生活からなんとか人生を進んでいこうとしている。彼らのほとんどは、とっととこのウエストテキサスから出ていって新たな人生を歩んでいくことを夢みているんだ。

 

 

ここ最近、若い世代の人たちはほとんどコンスタントに写真を撮ったりそれをシェアしたりと、カメラの前に立つことが多くなってきていると思います。それはあなたが若い人たちを写真に撮りはじめたときと比べて、なにか違いなどはあるのでしょうか?

 

本当にそのとおりだ。最近はほとんどすべてを記録しちまっているだろう。例えばなにか特別なことが起こったとして、それを写真に撮っていなかったらまるでなかったようなことになってしまう。

ちょうど昨日、とあるフットボールチームのために生きているかのようなアメリカの片田舎にある小さな町の記事をニューヨークタイムズで読んでいたんだ。その町のやつらは自分たちのフットボールチームに夢中になっていてチームのやつらをまるでロックスターかのように扱っている。もしそのフットボールチームのやつらがなにか悪さをしたら、とにかく見なかったことにしちまうんだ。大切なフットボールチームの一員だからってね。そのせいで16歳くらいのチームやつらは、みんなパーティーをして酔っぱらいまくりさ。そのうちの何人かの男の子たちなんかは、若い女の子を連れ回して裸にするわファックするわ、さんざん色んなことをして、ある日突然その女の子は行方不明になっちまった。彼女は記憶がないんだが、彼女が失神しているところ、吐いているところ、裸のところなどの写真があったんだ。つまりフットボールをやっているあいつらは、自分たちがやったことを写真に撮ったりしていて、それが悪いことだなんて誰も思っちゃいなかったんだ。そして彼ら自身のやったことを見せつけるかのように、インターネットに載せちまうってわけさ。そんなことをしたらその後どうなっちまうかってことを考えない彼らは本当に狂ってるぜ。結局彼らは逮捕されたんだが、町の半分のやつらは、こんなことをやった彼らは刑務所に行くべきだと考えたが、残り半分のやつらはフットボールチームの彼らが逮捕されたのはその女の子のせいだって考えるんだからな!

ちなみに一週間かそこら前に別の記事で読んだんだが、子供が鉄道のフェンスをのぼろうとした時、誤って線路側に落ちてしまってちょうど列車が来て轢かれて死んじまったんだ。でもたまたまそこに居合わせた人たちは、彼を助ける代わりにその状況を写真に撮っていたらしい。本当にひどい話だが、俺はなんとか理解しようともした。なぜなら、助ける代わりに写真を撮るってのは新聞で毎日目にしていることと同じだからな。そしてこういったことは、多少なりとも自分の作品にも影響していることでもある。全くの作り話じゃないという点でな。俺はいつも、真実や事実から反映されたものを写真に収めようとしているんだ。現実から影響されたものをフィクション化し、多くの人の要素を組み合わせてキャラクターを作っている。でも自分の脚本をキッズたちに読ませたときにやつらはこう言ったんだ。「これは現実だ。いま実際にここで起こっていることだよ」とね。

 

とにかく俺は、誰も見せたがらないような世界を敢えてドキュメントしているんだ。でもいまだにいくらかの人たちは、こんなことは絶対に起こらない、俺の撮っている物語は現実を歪めたものだ、って言ってくるんだぜ。

 

 

去年あなたがローマ・フィルムフェスティバルで『Marfa Girl』が最優秀賞を受賞した時のスピーチを読みました。あなたは「俺みたいなクソじじいども、そして消えゆく35mmフィルムに泣いているお前ら、35mmフィルムとともに死んじまえ!それがイヤなら前に進め!」と言っていました。そして、あなたは前に進むことを選んだ。実際にこの映画はオンライン上のみでしか見られないようになっています。フィルムはこの先もそれを愛するひとにとって大切にされる余地があると思いますか?それとも、すべてはデジタルになると思いますか?

 

本当のことを言うと、俺は35mmフィルムに愛着を持っているやつのひとりだ。でも、それはもう終わったんだ。ものごとは変わってゆくし、35歳から40歳以下のほとんどすべての人は、なんだってパソコンとか携帯電話で見てるだろう。俺のキッズたちは途切れることなくそういったものに接続しているからな。でも一方では、学校に暗室がある若い子たちは、そこで昔ながらに写真を現像しているというのさ。俺の息子はレコードを集めているんだが、あいつはパンクバンドをやっていて7インチレコードをリリースした。俺自身もたくさんのレコードを持っているってのもあるし…。まぁつまり、あらゆるイメージがつかの間で過ぎ去っていく今と並行するように、キッズたちは自らの手で実際に掴むことのできるものを欲しているんじゃないかなと俺は思っているんだ。

 

 

 

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