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*Translated from original interview on DAZED by Ashleigh Kane. This is translated by permission of Ashleigh Kane.

※これはDAZEDのインタビュー英語原文を著者のAshleigh Kaneより許可を得て日本語に翻訳したものです。

Photography by Valerie Phillips

「あなたの安全のために未消毒のものを!」

カラフルなフォトグラファーとモデルの2人組が現実世界におけるリアルな美の在り方を探る

 

インタビュー / 文:Ashleigh Kane

 

ヴァレリー・フィリップスは自身を「写真界のピーターパン」だと言う。青春時代から今も変わらずステッカーやアウトサイダー・アートやジンをこよなく愛する彼女の7冊目となる写真集『hi you are beautiful how are you』でペアを組む相手には、サイバー・プリンセスであり、フォトグラファーであり、モデルであり、そしてカラフルなもの(特に髪)やキャンディ・ネックレスやジェリー・ジュエリーといったノスタルジックなものを愛するアルヴィダ・バイストロム程ぴったりな人はいないだろう。

レインボーカラーの髪をしたアルヴィダとロンドンでの最初の撮影の前に初めてスカイプで話した時のことをヴァレリーはこう振り返る。「アルヴィダにロンドンでの撮影の時に持って行きたい彼女の私服や好きな小物を聞いたの。そしたらまぶしいピンク色のスウェットパンツとスパンコールのニップル・タッセル(※ストリップダンサーなどが乳首を隠すためにつける飾り)を見せたの!それって完璧な自己紹介だと思ったわ」そしてその撮影がその後2年間に渡って4つのプロジェクトを生み出す始まりとなった。

 

そして出来上がったのは、体毛が見えていようがノーメイクだろうが、女性たちのありのままの姿を提示するヴァレリー独自の純粋な製法によって薄められることなく作られた原液そのままの「一般的な美の観念を覆すひとりの若い女性の誠実なポートレイト」となった。

「みんな私が撮ってきた女性たちのことを実年齢より若く思っているみたい。だって彼女たちはいつも楽しい時を過ごしているからね。彼女たちは着飾り過ぎないし、一般的なファッションのイメージでありがちな女性の在り方にはもううんざりしているのよ」とヴァレリーは言う。

このダイナミックな2人組に、身分証明を求められた時のことや真髄に触れることの重要さ、そして本当の美しさの概念について聞いてみた。

 

 

どうやって2人は出会ったの?一目惚れ?どうして撮影するまでに至ったの?

 

アルヴィダ:私が友達に、人生で何をしたらいいのかわからなくて不安で、ロンドンに行ってフォトグラファーのアシスタントでもした方がいいのかな、とか話をしていたの。そしたら彼女が「ヴァレリーと話してみたらいいと思う」って言って紹介してくれたの。その後ヴァレリーが電話をしてきて私を撮影したいと言うまでに私は彼女の作品を見る時間さえ無かったわ。その時はロンドンで自分が撮影されることは全然私のしたい事とは違ってたんだけど、でも結局私はロンドンに来て2年経った今となっては私たちは親友!だから私はとっても幸せ。

 

ヴァレリー:最初はスカイプで出会ったんだけど、私は一目惚れだった。それは実際に会ってみて最初の10分で完全に明らかなものとなって、出来る限りたくさんアルヴィダと一緒にいて彼女を写真に撮ることに幸せを感じているわ。私はリアルな生き方がどんなものかってことにとても興味があるの。私にとって美しさと確かさを賞賛することとは写真を撮ること。もちろん私が表現しているのは私バージョンで捉えた彼女の生き方だけど、それは空想のものじゃない。だからある意味、この写真集は私たち2人についてのものとも言えるかな。

Photography by Valerie Phillips

あなたの作品におけるフェミニズムについてはどう思う?

 

アルヴィダ:私は表現と女性らしさに興味がある。私自身は同性愛者。そのことは私の作品の中にも表れている時もあるし、そうじゃない時もある。

 

ヴァレリー:私はそんな下らないことや制約を設けることにさく時間なんて無いけど、もし私の作品がフェミニズムとして受け取られるのであれば素晴らしいことね。私にとって大切なのは作品を生のまま提示すること。全てのもの、特に女性を綺麗にパッケージして提示しようとする保守的なメディアから邪魔されずにね。興味深くて複雑な事に対して中庸な立場を取っているわ。

 

一般的にフェミニズムは「飲み込みにくい薬」として捉えられていて、女性特有のことについて話すことでさえもはばかられているけど、アルヴィダ、あなたは生理に関する作品シリーズを発表した時に感じただろうけど、作品自体はそのものに権限を与えるような作品であったにも関わらず人々はショックを受けたり怒ったり恐れたりしていたわよね。なんでみんなそういった事について正直になるのにそんなに大変な思いをしているのだと思う?

 

アルヴィダ:資本主義がいつも必死に守ろうとしている多くの規範のせいよ。だって生理用ナプキンとかタンポンのCMを見てみてたらわかるでしょ。絶対に血を見せないようにして代わりにブルーの液体を使っていかにパッドの吸水性がいいかを見せようとしている。そして「ハッピーでフレッシュな女性」とか謳ってる。でもみんな知っているでしょ?どんだけあって欲しくないと思っていてもそこには血があるってことを。

 

体毛を堂々と見せていたり、アルヴィダがめったに髪を洗わないこととかは西洋社会における美の在り方としてはちょっと変わったように捉えられがちだけど、それらのことはポートレイトを撮るにあたって大切なこと?

 

ヴァレリー:残念なことに多くのファッション雑誌や広告ではそういったリアルな人間性やセクシュアリティを見せることはタブーとされているけど、私は魅力的なことだと思う。なんでみんなそんなにリアルな生き方に対して恐れたり拒絶反応を示すの?超表面的な偽物バージョンの綺麗なものはOK、だってそれはまるでSFだから、って、それじゃ全然真髄に触れていないわよ。だから私は完全な自由を表現できる本とかジンを媒体として使っているの。あなたを守るために未消毒のものを!ってね。

Photography by Valerie Phillips

ヴァレリー、あなたの青春時代は今のあなた自身にとても影響を与えているようだけど、どうやってそれをキープし続けて作品全体に落としこんでいるの?

 

ヴァレリー:ピーターパンみたいな存在でい続けることは私にとってはごく普通のこと。私には子供もいないし、典型的な大人としての象徴や責任といったものも無い。私にはこの生き方が合っていると思ったからそうしただけだし、あとは莫大な量の自由さを手に入れるために作品を作ることが好きだから。思春期に影響を受けたものと今でもとてもつながっていると感じるし、宇宙、スケートカルチャー、ジン、パンク、アウトサイダー・アート、ステッカー、馬とかいった子供の頃に好きだったものは今でも私にとっては変わらないものだから、そういったものがいつも私の写真の中に入らないでいることなんて不可能だわ。

 

アルヴィダ、写真の中のあなたが実年齢よりもずっと若く思われていることをどう思う?あなたは以前ヴァレリーの作品を印刷する時に印刷会社が未成年なんじゃないかって疑ってあなたの運転免許証のコピーの提示を求めたんだったよね?

 

アルヴィダ:実際にあの時の私は幼く見えたんだと思う。あと、人はカラフルな服を着ていると「若い」って認識するってことよね。私がノーメイクでカラフルな服を着ているとよく14歳と間違えられるんだけど、私の身長は180cmもあるのよ?私がピンクが好きだからってだけで本当に14歳に見えるの?

 

ヴァレリー:最近Facebookで見たんだけど私のアルヴィダの写真に対して「こんな作品で危険なゲームをしている」って非難していて、20代前半の立派な大人のアルヴィダに対して「性的なステレオタイプの若い女の子」ってコメントしていたの。狂ってる!このことは私にとっては、ほぼノーメイクでムダ毛の処理をしていなくて髪をめったに洗わなくて面白い人生を送っていて昼間の下らないテレビのプロデューサーが許可したような服を着ていない一人の女性を見せるということに由来していると思う。

 

この写真集を作る時にあった何か面白いエピソードはある?

 

アルヴィダ:アハハ、わかんないけど、私たちは一緒にいてとってもリラックスしていたわ。多分、私が髪を紫色に染めたかったのにブルーに染まってしまってちょっとイラついていて、それを見てヴァレリーが笑っていた時かな。その時の写真は写真集の中に入っていると思うけど。

 

ヴァレリー:この本を作る時、本当にたくさんのことで笑ったわ。まず最初はアルヴィダに撮影のためにロンドンに来ないかと誘った時の彼女の全くやる気の無い反応ね。多分それはスウェーデン式のクールな無関心かもしれないけど、私にとっては全然予想していなかったリアクションだったからすごく可笑しかった。私たちはまだそのことで笑い合っているわよ。あとは彼女からのたくさんのメールかな。それは別に笑わせようとして書かれたものじゃないんだろうけど、でも本当に爆笑ものなの!彼女のユニークな言葉使いと率直なトーン、無関心っぽさはものすごく魅力的だと思う。だから私は私たちがメールでやり取りした会話の一部をジン『This Is My Drivers License』の中で使ったの。

 

この写真集を通じて2人が成し遂げたかったことは何?

 

アルヴィダ:友情の証の本ってことは私にとって必要不可欠!この本を見るといつだってヴァレリーと一緒に遊んでいた時のことを思い出すわ。

 

ヴァレリー:ごめんなさい、それを超える答えがみつからないわ!

 

 

 

 

 

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