アメリカの現代美術を代表するアーティストの一人、Ed Ruscha（エド・ルシェ）の最新作はリネン布の上にブリーチ（漂白）を施したブリーチ・ペインティングの作品シリーズ。落ち着いたトーンのグレーやブルー、赤茶色に染められたリネンの上にブリーチされて浮かび上がる謎めいたメッセージ。

彼はアーティストキャリアの初期の頃、紙やカンバスの上に絵具の代わりに火薬やフルーツジュース、石けん、コーヒー、精液、シロップなど様々な液体を使って作品を作る実験をしていた。その頃、昼間は植字工として働いており、すでに彼にとってカルチャーと印刷物とは深く結びついていて、ボードにリネン布をはったものやハードカバー本の表紙の上に小さなペインティングをし始めた。

これらの並行した実験が役に立ち、身代金要求や脅迫状に使われる切り貼りした文字をもとにした小さな、謎めいたペインティング作品へと発展させていった。

これらの初期の実験の後、彼はリネンを使った本の表紙にイメージと文字の関係性が曖昧で不明瞭になりタイトルが簡略化されるまで徹底的にブリーチを施す作品制作を続けた。

エド・ルシェの最新作のブリーチ・ペインティングには「CRYSTAL SKIES」や「SERVICE CLOWN」などといった不可解な言葉の一部がぼんやりと浮かびあがっている。さらによく見てみるとコントロール不可能な制作過程で偶然ついたしぶきやはねの跡が見受けられる。

絵具と筆とカンバスの代わりに漂白剤と綿棒、染めた布の本を使ってルシェはイメージと文字、そしてオリジナルとレディ・メイド（既製品）の関係性をよりミステリアスに提示しながら掘り下げている。

作品撮影は全て弟のポール・ルシェによるもの。

 

 

23.5 × 29.2 cm  / フルカラー / 64ページ / ハードカバー / 2014年 

定価 3,800 円( 税抜)

 

Published by KARMA & GAGOSIAN GALLERY